2007年08月27日

「両手いっぱいの花束…@」

アルバイト先のレストランに、
新しく、U君という高校生の男の子が入ってきた
洗いっぱなしの短い髪がいつもツンツンに立っていて
顔にはニキビが花盛り・・・
純朴な可愛らしい少年だった

真面目で素直なので、どんな仕事も頼みやすく
普段は黒服に蝶ネクタイでフロアーに立っていたけれど
時には汚れた白衣を着せられ、
洗い場で大きな寸胴鍋などを、一生懸命に洗っていた
その若くて清清しい後姿
私はいつしかU君の姿をそれとなく追うようになっていた
がしかし、それは、可愛くてたまらない愛しい弟を見守る
姉のような気持ちだったと思う・・・

仕事の手が空いた時、あるいは休憩時間、
U君とよく話をするようになった
あどけない顔から受ける印象と違い、
背は意外にも私をはるかに超え、
黒い制服のズボンの下の、まっすぐに伸びた長い足は
少年が青年へと変わる時期が、
まもなくそこにあることを物語っていた

素直に育った明るいだけの、ごく普通の男の子だと思っていたのに
色々と聞き、推察するに、家庭は母親と妹の3人暮らし
母親との関係に少々苛立ちを覚えている孤独な少年のようだった

秋が過ぎ、正月が来た
私は自費でデザイナーを目指す貧乏な専門学校生だったので
放課後も、盆も、正月もなかった
長期のお休みは、アルバイトにも終日入ることができるので
ありがたい稼ぎ時でもあったのだ
正月、2日まで、レストランはお休みだった
3日、その年の初仕事を終えた後、
閉店時間まで仕事に入っていたU君と、帰る時間が一緒になった
私はU君を八坂神社の初詣に誘ってみた・・・

「え?本当ですか!うれしいです!」
少し驚いたような表情の後の、明るいU君の声に私は安堵した
私は23、U君は17・・・
四条通を並んで歩く姿は、歳の離れた姉弟のように見えただろうか
底冷えのする京都の正月の夜・・・
マフラーをぐるぐるに巻いたU君を見上げると
真っ白く凍った息が、額の上まで舞い上がり、消えていった・・・

神社に着くと、参道には、屋台がびっしりと立ち並んでいる
人出もそれなりに多く、真っ暗な境内に、
白熱灯のオレンジ色の灯が続き、
いつもとは違う正月の華やいだ表情に、
私たちの心も浮き立っていた
なんでだかわからないけれど楽しくなって、
二人で子どものようにはしゃいでいた

U君は、射的の屋台を見つけ、声をあげながら走ってゆく
夢中になって、色んなおもちゃに玉を当てている表情は
まだ小さな子どものように真剣であどけなかった
そしてまた、あまりにも夢中になりすぎるその姿は、
少し危なっかしいようで、若者らしい残酷さもあり、
だから守ってあげたいような気持ちにもなり
また、その遊びの間、私を全く忘れているかのような姿に
置き去りにされた淋しさに似たものを感じた

私はこの6歳の歳の差に戸惑いながらも、
そのまばゆいばかりの若さが新鮮で、
当時、色んな不安を抱えていた私自身の心の中が、
刺激され、ほぐれてゆくのを感じていた・・・

                       続く・・・

**************************

この物語はフィクションであり、
登場する人物、出来事などは実在せず、
また事実とは異なりますので、ご了承願います(^^v)



posted by マロニエのこみち・・・。 at 00:10| Comment(10) | TrackBack(0) | 小説風エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最後のオチに「何じゃあこりゃああ!!」と松田優作ばりに叫びそうになりました(笑
せっかく、白熱灯の提灯の明かりに妖しげに浮かぶ若き日の甘く切ない記憶のご開陳とばかり思って楽しんでおりましたものを(*´∀`)

んで、続くんですかいっ(爆
Posted by 107 at 2007年08月27日 00:47
107さん

こんばんは
期待通りのリアクション、ありがとうございます♪
はい、延々と今回は続きますので、どうか最後までお付き合いの程
宜しくお願いいたします
おありがとうございます〜♪
Posted by マロニエのこみち・・・。 at 2007年08月27日 01:27
読み切りでなくて、連載小説の始まりなんですね。
これからが楽しみです!

名作に対して失礼ですが、
『続く・・・』で終りにして頂きたかったですね〜
**************************
の後の文がなければ、ドキドキしながら読めたのに〜〜

正月の夕暮れ(夜?)の八坂神社、いい舞台ですね。
ドラマ化もすぐにできそう。
Posted by capucino at 2007年08月27日 09:16
あ〜妄想してしまう。

あ〜なってこうなってきっとこうなるんだわ〜

期待を裏切る展開を楽しみにしてます。

読書の秋にピッタリのスタートです。

『フィクションといっても実体験入ってますね、きっと』

と思いつつ読ませていただきます。
Posted by ふくわうち at 2007年08月27日 10:14
きゃあ★

マロニエのこみちさんたら。
私をどうする気?(笑)

もう、読んでいて、めろきゅんです♪
楽しみすぎて、挙動不審になりそうですよ〜。

続き、待ってます!
Posted by みどり at 2007年08月27日 17:15
マロニエ殿

一気に読んでしもうたヨ
拙者の青い春を思い出したぞ

拙者はアルバイト先ではなかった

高校一年の夏、簿記を習いに行っていた塾で、同じように簿記を習いに来ていた小学校の先生に可愛がっていただいた。
イヤ、英語を教えてくれると言うので先生の下宿先にほぼ毎晩通い詰めていた
先生は英語だけを教えればよいものを、違うことまで教えたのじゃよ
それからじゃ 拙者の人生が狂ったのは・・・・・
遠い40年以上前のことじゃ

まっ、人生色々じゃからな

ところで、あの「盛春歌」がNHKでかかるのよ
明日の夜、8時からの「歌謡コンサート」という番組じゃよ
唄うのは南部直登、拙者のマブダチよ
拙者の出演は歌の紹介の字幕に「作詞 克舟」だけじゃ
残念じゃが顔は出ない 
でも日本中だけではなく、世界中に放送されるそうじゃよ

マロニエ殿にも見てもらいたいのぅ
デワデワ
Posted by 克舟 at 2007年08月27日 17:17
capucinoさん

おはようございます
一気に書いてほぼ完成しているのですが
この連載はしばらく続きそうです(^^;
>『続く・・・』で終りにして頂きたかったですね〜
フィクションでも、どうかお楽しみくださいね〜(えへ・・
ありがとうございます!♪
Posted by マロニエのこみち・・・。 at 2007年08月28日 07:13
ふくわうちさん

おはようございます♪
妄想ですか・・あはっ
私もふくわうちさんがどんな妄想をしておられるのか気になりますよ(笑
はい、妄想の世界に最後までよろしくお付き合いの程を・・・♪
ありがとうございます!
Posted by マロニエのこみち・・・。 at 2007年08月28日 07:15
みどりさん

おはようございます
>挙動不審
そんなぁ・・・(爆笑
面白すぎて思わず噴出してしまいました
みどりさんのお好きな男前顔を登場人物に当てはめて
妄想の世界をぜひともお楽しみくださいませ♪
ありがとうございます!
Posted by マロニエのこみち・・・。 at 2007年08月28日 07:18
克舟さん

おはようございます♪
ついに今日でしたか!
もちろん楽しみに拝見させていただきますね!
さっそくご紹介させていただかないと・・・♪
ところで40年前のかわゆい克舟少年・・・
はい、私もその先生と同じで、きっと襲うと思います・・・(笑
ありがとうございます♪
Posted by マロニエのこみち・・・。 at 2007年08月28日 07:21
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