2007年08月29日

「両手いっぱいの花束…B」

季節は夏になっていた・・・
私は、秋に行われるデザインコンテストの絵を提出し、
一時審査を通過したので、
今度は二次審査のための服を、作らなければならなかった

上半身は白のニットで、下はサスペンダーの付いたダボパンツ
ウエスト部分に、ワッカ状の綿の入った飾りが、
全体にぐるりとぶら下がっているという
動いたときの躍動感を狙ったカジュアルな雰囲気の服だった
ショーの本番で着て下さるモデルはイタリア人の女性で、
モデルと体系の近い仮縫い用のモデルを、
さっそく探さなければならなかった

モデルのサイズに目を通していると、
私はいつも見ているU君のシルエットを思い出した
骨格はしっかりしているのに、若者らしく贅肉のない
健やかに育った綺麗な縦長のシルエットは、
このモデルのサイズに随分近いような気がした
私は思い切ってU君にそのことを伝え、
もしよかったらモデルになってくれないかと訊いてみると、
彼は戸惑いながらも、若者らしい好奇心から
この申し出に、承諾してくれたのである

私たちは休憩時間を利用して、
レストランの3階にあった雀荘のおばさんに場所を貸して頂き
U君のサイズの確認のための、採寸をすることにした

マージャン用の、緑色のテーブルがたくさん並んだ部屋で二人
昼と夜の営業時間の合間なので、部屋のクーラーは止まっている
窓の外の喧騒しか聞こえない西陽の当たる蒸し暑い部屋で
私はU君の体に、そっとメジャーを当てていった

薄いシャツの生地を通して、U君の汗がじわじわと滲んでゆく
私の指の触れている部分から、生暖かい蒸気が立ち昇り、
それは清らかな洗剤の香りがした
空気が動いた瞬間に、彼の押し殺した息づかいが聴こえる・・・

その、張り詰めた空気を誤魔化すかのように、
U君はいつものように、無邪気さを装って、
おどけた調子で喋り始めたのだけれど、
ズボンのサイズを測るために、私がひざまずいて、
腰の辺りに手を伸ばしたとき・・・
微かにU君の体が強張って、息が止まったのを、はっきりと感じた
そのとき私自身も、体の一部に、
引き攣るような小さな痛みを感じたのだ・・

恋というのではないはずだった
私は、付き合っていたEのことを愛していたし
純朴な少年が愛しくて、
ちょっと親しくなりたかっただけのことなのである
でも、その幼くて、可愛いだけだと思っていた少年から、
思いがけず、突然ストレートにぶつけられる真摯な言葉に、
いつも私の気持ちは揺さぶられた

「●●さん、付き合っている男いるんでしょう。
いったい何年付き合ってるの。
なんでそいつ、結婚しようって言わないんですか!」

そうだったのだ・・・
Eとは付き合い始めて4年になるのだけれど
二人の間に、結婚の話が一度は出たものの、
諸事情が重なって立ち消えとなり
以来、その言葉が出たことはない・・・
そのことも、私の不安や淋しさの一部だった

「僕なら放ってなんかおかない。そいつに言ってやりたいですよ。」

U君の言葉はどこまでも真っ直ぐで、
優しさと大人の狡さを合わせ持つ優柔不断なEに慣れた私には、
いつも新鮮な驚きがあった

コンテストに出品する服が完成したのは、秋の初め・・・
私とEとは、相変わらず交際を続けていたし、
U君が、アルバイト先の仲間の一人であることに変わりはなかった
ただ、一度だけ、仕事の帰り、二人で食事をする機会があって
その日、私たちは、いつもより長い夜を過ごした

遠い遠い、遠い昔のことである
何も覚えてなどいない・・・
ただ、あのとき私は少し酔っていて、
普段よりも奔放になっていたと思う

U君は・・・
母親以外の女に触れた、初めての夜に・・・
なった日であったかも、しれない・・・

                  続く・・・

Fショーの服

**************************

再度申し上げますが、この物語はフィクションであり(^^)
登場する人物、出来事などは実在せず(^m^ )
また事実とは異なるのですが(^^v)
最後に添付した写真は、
私が実際に第一回目のコンテストで入賞した作品であり
文中の服のデザインも、こちらをモデルにしておりますm(_ _)m



posted by マロニエのこみち・・・。 at 00:14| Comment(10) | TrackBack(0) | 小説風エッセイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
マロニエ 殿

昨日はありがとうございます。
放送が終わったとたん電話がひっきりなしに鳴ってしまいました。
沢山の方に応援されて巣立っていくのですね。

ところで、この小説、はまっちゃった。
《何も覚えてなどいない・・・》
ではなく、忘れた振りをしているだけなのがオシャレだな

小学校の先生はフィアンセがいたんですぞ
でも、とっても良き思い出じゃった

U君も甘酸っぱい思い出じゃったろ
そんな風にして大人になってゆくんじゃ
Posted by 克舟 at 2007年08月29日 09:05
小説、楽しく読ませていただいています^^
胸の奥がキュッとなって、若返るカンジです♪
Posted by たっくん at 2007年08月29日 11:37
こんばんは★

いいですね〜。
完璧にはまっちゃいました(*^_^*)。

ストーリーももちろんですが、お洋服のことに絡めて書いてあるのが、凄くいいなぁと思います。
マロニエのこみちさんでなければ書けないお話になっていますもの。
今後の展開と、そしてはやくも次回作も楽しみでなりません。

それにしても、このデザイン、オシャレですねぇ。
歩いたときの様子が見たいなぁ〜と思いました。
Posted by みどり at 2007年08月29日 19:40
息が詰まって胸がドキドキしてきました。

「起」「承」と来たようですが
どんな「転」と「結」が待っているのか?
リアル感に満ちた見事な筆捌き!
「続き」に期待しています。

Posted by capucino at 2007年08月29日 20:26
マロニエのこみちさん、こんばんわ〜!

ど、どこまでが・・・フィクションなのか・・・
気になりながら読ませてもらってます・・・(笑)
注釈は・・・今のところ・・・信用しておりません(爆)
しかし、流石にグッと読ませますね〜♪
Posted by deep at 2007年08月30日 00:20
克舟さん

おはようございます
私も記念となる華々しく素敵な舞台を拝見できて
本当に光栄でした
心から、これからのご発展をお祈りしたいと思っています
ところで、その先生の気持ちは私にもよくわかります
結婚が決まったマリッジブルーのその時期に・・・
可愛らしい克舟坊やが目の前に現われたなら・・・
間違いなく私も先生と同じ行動を取ると思います
はい・・間違いなく頂戴します・・・(笑
ありがとうございます♪
Posted by マロニエのこみち・・・。 at 2007年08月30日 09:57
たっくんさん

おはようございます
私も妄想し、描きながら、日々、若々しさを取り戻しております(笑
お互いに取り戻しましょう
ビバ!青春(笑
ありがとうございます〜♪
Posted by マロニエのこみち・・・。 at 2007年08月30日 09:59
みどりさん

おはようございます
ご専門のみどりさんに、そのようなご批評を頂いて光栄です
励みになります〜〜♪
この服、上は毛糸のジャケットを着ているんですよ
パンツはベルベットです
色もシックなので、カジュアルでもちょっと大人っぽい感じで
自分でも気に入っていました
モデルさんが、くるくる舞台で回ってくださり
私も大満足でした・・・♪
ありがとうございます♪
Posted by マロニエのこみち・・・。 at 2007年08月30日 10:02
capucinoさん

おはようございます
本当ですか
とってもうれしいです
●も木に登ります・・(笑
いまからcapucinoさんのために、『救心』を買いに行って参ります(笑
ありがとうございます♪
Posted by マロニエのこみち・・・。 at 2007年08月30日 10:04
deepさん

おはようございます
>注釈は・・・今のところ・・・信用しておりません(爆)
笑・・・
はい、deepさんの少年時代を妄想しながら創作させていただいております(笑
ありがとうございます!
Posted by マロニエのこみち・・・。 at 2007年08月30日 10:06
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