2011年01月24日

「巴里の空の下 オムレツの・・・」

先日、夕食にオムレツを作ったせいなのか
急に読みたくなって、本棚から久しぶりに取り出した本

石井好子さん【巴里の空の下 オムレツのにおいは流れる】
(暮らしの手帖社出版)

1960年の【暮らしの手帖・第一世紀】にエッセイとして掲載されたものが
1963年に出版され、以来40年以上一度も絶版になることなく
読み継がれている、言わずと知れたベストセラー

石井好子さんといえば、日本のシャンソン歌手の草分け的存在で
昨年の夏に残念ながらお亡くなりになられたが
岸洋子さんや、加藤登紀子さんなど素晴らしい歌手を
育てられた方としても有名である
私はシャンソンが好きで、
多分たいていの人のCDを持っているのだけれど
何故か不思議なことに、石井好子さんのそれは持っていない
いわゆる偉い方だけに、何となく聴く気がしなかったのかもしれないが
この本を改めて読んでみて、
やはりこの方のCDも持っていなければおかしいだろうと考えを改めた;

海外旅行者も少なかった戦後の日本人において
海外各地に留学し、レビュ劇場などで歌手として仕事をされ、
そんな生活の中で実際に作ったり、街で食べ覚えられた料理のことが
驚くほど飾らない文で書かれている
今の料理本のように、写真があるわけでもなく、
一応レシピは載っているものの、
作り手のアレンジができるよう、至って簡潔に記されているところなど
押し付けがましくない著者の懐の深さを感じる

佐野繁次郎さんによる美しくてモダンで
どことなく可愛らしくて、古き時代が懐かしくなるような
細い線のイラストで表紙や挿絵が飾られている
私がエッセイとして一番好きなのは

モンマルトルのレビュで明け方の3時まで仕事をし
朝の5時まであいているキャフェの窓際で

『着飾ってナイトクラブから出てくる人々や、街の兄(あん)ちゃんたち、
花売り、娼婦たちのゆきかうのを眺めながら、
冬は湯気が立って、チーズをたっぷりかけるオニオンスープをたべたり、
夏はサラダや冷肉を小瓶のブドー酒と・・・』


というくだりだ
少し退廃的な雰囲気の漂う夜のパリの街と、
湯気の立ち上るキャフェの対比・・
こんな深夜のパリの街は知らないけれど、
そういえば、まだ暗い極寒の朝の5時に、
食べ物を求めてサンジェルマン辺りを歩いたことがあった
残念ながら、私が見つけたのは、マクドナルドだけだったけれど・・;
凍えるほど寒いパリの往来を眺めながら、ふうふう頂くオニオンスープ・・
想像するだけで楽しくなる・・

後ひとつ、レシピとして、試してみたいと思ったのは
ドイツ料理の【ザウエル・クラウツ】(ザワークラウト)
これは、かつて恋人と日曜日、京都の街を歩いていたとき
よく利用していた河原町のビアレストランで、
いつもソーセージの隣に添えられていた酸っぱいキャベツのことである
石井さんのレシピを見ると、意外にも簡単に作れるようなので
農園によくキャベツを見かけるこの頃、作ってみようかと思う

いわゆるオチというものはなく、淡々とペンを置かれているが
ケチな日本人とあなどらないため、愛国心を出して
スパゲティや肉を残さずに食べたら、二貫目も太ってしまったと
いかにも食いしん坊の言い訳が書かれ、〆ているのが微笑ましい
そうなのだ・・
食いしん坊は、決まって太ることに、何かの言い訳をつけるものだ
(ていうか、それは私だけ?^^;

ちなみにこの本は、古本屋で買ったので、本の最後のページには
知らない人のペンで、『1988.4.5』と記されていて
本の最初の方のページは、定規で几帳面に線が引かれ
矢印で、ページの上に『オムレツアラカルト』『チーズオムレツ』
などと、綺麗な鉛筆の字が書かれている
ページを繰りながら、先の持ち主さんのことを
あれこれと想像しながら読むこともまた楽しい・・

posted by マロニエのこみち・・・。 at 10:04| Comment(6) | TrackBack(0) | 本・雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 この書籍は私も大好きな一冊なのですが、表紙の装丁は残念ながら佐野繁次郎によるものではないのが事実です(たまに古書店さんでも間違えて表記されていますよね、ご参考までに)。
Posted by 佐野本ファンより at 2011年01月25日 18:20
マロニエさん
こんばんわ。お元気ですか?40(?)肩は治りましたか?
雪こそ降らないけど、こちらも寒いです。
京都の冬は、ちょっとしか経験がありませんが、やっぱり寒いですよね。風邪など引かぬようお気をつけください。
たまには、顔を出してくださいね。それではまた。
Posted by ふたば at 2011年01月25日 20:08
佐野本ファンよりさん

こんばんは
そうなのですか?
では、花森安治さんによるものなのでしょうか?
私もどちらなのか迷った末、佐野繁次郎展の画像に載っていたので
てっきりそうなのかと思っていました
それにしても、本の中に装丁者の名前がいっさいないのも
不思議なような、奥ゆかしいような・・という思いがいたしますね
コメントありがとうございました
Posted by マロニエのこみち・・・。 at 2011年01月26日 19:36
ふたばさん

こんばんは♪
私のことを覚えていてくださって(笑
ありがとうございます!
今日もお日様が隠れてしまった夜になってからというもの
殆ど風通しのよい我が家では暖房も効かないような冷え込んだ夜です;;
ふたばさんも、どうかご自愛下さいませ
すっかり絵を描く時間がなくなり、久しぶりに筆を持っても、描けるかどうか怪しいです(^^;
Posted by マロニエのこみち・・・。 at 2011年01月26日 19:39
マロニエさまへ

ご推察の通り、花森安治氏の装丁というのが通説です。
佐野繁と花森は、伊東胡蝶園(現パピリオ化粧品)宣伝部から
「暮らしの手帖」の流れでの美術創作において師弟関係でもあります。

ちなみに同じく佐野に独特な崩れ文字を教示された方として
佐野と愛人関係にあったと言われるマダムマサコ氏や
「しまだ鮨」のオーナーで一時編集関係の仕事もこなしていた
島田しづ(島田しづ子)氏なども佐野文字と酷似しており
なかなか判別しにくく間違われ易い作品と認知されているようです。

Posted by 佐野本ファンより at 2011年01月27日 15:23
佐野本ファンよりさん

こんにちは
お教えいただきありがとうございます!
そうでしたか〜〜・・
とても興味深いお話ですね
そういうお話を伺うと、装丁者を公表しないのも、
何か意味深なのかと思ってしまいますが・・(^^;
いずれにしても、とても好きな挿絵であり絵であります
佐野さんの絵は、(もちろん尊敬してる花森さんもそうですが)
中高生の頃に文庫本を手に取ったときの
あのなんとも言えない懐かしさのようなものがこみ上げてきて
たまらなく心地いいです
ところで、つかぬ事を申しますが
佐野本ファンさんは、あの謎の紳士様のところでよく投稿されておられる
『遊』と言う字をハンドルネームにお持ちの博識美人様ではないのでしょうか?
推察が違っていたらゴメンナサイ(^^;
Posted by マロニエのこみち・・・。 at 2011年01月27日 17:25
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