2012年10月04日

「観自在とシャンソンと」

毎年10月になると、特に意識しているわけではないのだけれど
故人を偲ぶためなのか、我が家の設えが、喪に服す仕様となる

まず、玄関の絵は『観自在』に・・・
BGMは、ラジオの代わりに、シャンソンのCDを聴くことが多くなり
立原正秋の受け売りで言えば、
『金木犀の香りがする数日を除いて』香を焚く・・・

さて、そのシャンソンの話だけれど、昨年、
【私の来た道〜シャンソン 石井好子】のことを書いた

このCDは、1990年、石井好子さん68歳のときの作品で、
まさしく脂が乗り切って
最高潮の歌を聴かせて下さる傑作集だと思うのだけれど
全てが大好きな選曲の中でも、特に【異国の人】と【かもめ】に関しては
例えようがないほど秀逸だった

どちらもダミアの歌った曲で、この二作は、
『異国の人』へのレクイエムとしての『かもめ』とも言うべき流れとなって
一緒に続けて聴くのがいいと思うのだけれど
昨年、このCDに感動し、続けて買った【ダミアからDamiaまで】という作品も
同じくこの二作が続きで編集されている

ダミアに関しては、今までにも何度も書いてきたように
一番好きな曲の多い歌手で、
どちらかといえば私は、この癇症持ちのような声の、暗い曲を歌うダミアが
【愛の賛歌】は別格として、実はピアフよりもずっと好きなのだけれど、
石井好子さんも、CDの中でこう書かれている・・

私が初めてシャンソンのレコードを聴いたのは太平洋戦争が始まった頃、
それこそ70年位前のことです。
音楽学校の声楽家でドイツ歌曲をならっていたのに
夜になればシャンソンのSP盤ばかり聴いて、
中でもシャントゥーズ・トラジェディエンヌ(悲劇の歌手)と称された
ダミアのとりこになりました。


しかしながら、歌手となった初めのころは、
名門の令嬢で、音大の出で、そんな人が
『ダミアのような失恋や貧窮をうたったシャンソンは明らかに不向きな人』
と批評されて、肝に命じたということだった

私がごく最近まで石井好子さんを聴かなかったのも、
まさしくこの思いがあったからで、プラス権威の匂いがするのでは・・
という懸念からだったのだけれど、
恐ろしいことに、この御歳85歳の歌唱は、遥かにダミアを超えていた・・・

正直なところ、最初の数曲を聴いたときは、
やはり買わないほうがよかったのだろうか・・・
幾らなんでもやはり無理があるのでは・・・と思ったのだけれど
中盤頃から少しずつ引き付けられて、ラストの
【暗い日曜日】【人の気も知らないで】【異国の人】【かもめ】になると
まさしく魂から絞り出される声に、魂が揺さぶられる・・・
としか表現できないような感銘を受けるのである

素晴らしい・・・
本当に素晴らしい・・・

美空ひばりさんの、最後のリサイタルの【みだれ髪】のDVDを観た時
歌っているひばりさんご自身が、もはや人ではなく
歌と一体化した精霊のようなものだ・・・と思ったものだけれど
この石井好子さんのラストとなるCDの歌声も同じようなものだと思った
そして、CDの裏面のお写真・・・
なんとお美しいのか・・・
68歳の頃よりも更に美しく輝かれ、まるで菩薩様である

・・・どこから来たのか
私の知らない 遠い国から あの人は来たの
淋しいという声に負けたの
悔やみはしない 独りは誰もせつない・・・


多分、最低でも今月いっぱいは、
しつこくこれらの曲を聴き続けて暮らすと思うけれど
ダミアよりも深くせつなく響く歌を歌えるようになるまで
この方がどんな人生を送ってこられたのか・・・
CDと一緒にたくさん揃えた本を、もう一度読んでみたくなった・・

posted by マロニエのこみち・・・。 at 00:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/387824113
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック