2012年12月21日

「秋〜の読書と挿絵にまつわる・・・C」

もう秋とはいえない季節になってきたので
このシリーズの名前も少しだけ変わりました

先の、森茉莉さんの作品の中でも、
名前を変えてたびたび登場する室生犀星
この『ちぐはぐ』な、お二人の様子がとても面白いのですが
森茉莉さんは、犀星のことを、とても慕っていたらしく
小説の仕事が来たときも、真っ先に相談に行ったのだそうで
次はそんな犀星の本を棚から取り読んでみました


我が愛する詩人の伝記 (1966年) (新潮文庫)



犀星が69歳のとき、雑誌【婦人公論】に連載された文章をまとめたもので
今は亡き11人の詩人たちとの交流を書いたもの
その詩人たちとは次の方々である

北原白秋、高村光太郎、萩原朔太郎、釈迢空、掘辰雄、立原道造、
津村信夫、山村慕鳥、百田宗治、千家元麿、島崎藤村


まず興味を持ったのは、立原道造と百田宗治
立原道造は、好きだった八木重吉とはまた思いが違い、
高校時代の遠い憧れの詩人だった

その人物像は、『ゆうすげ』の花咲き乱れる軽井沢の草原を
清らかに吹き抜けてゆく風のようなイメージで
詩集を手にし、乙女だった頃(?)の私の夢が
どれだけ膨らんだことだろう・・

数年前、東京に行った際、本郷の弥生美術館に併設されている
道造記念館に立ち寄った
余り時間がなかったので、ゆっくり出来なかったのが残念だったけれど
自筆の建築画や、原稿などを観た後
可愛い積み木の家のようなパステル画の葉書や
同じく自筆のイラストの描かれた一筆箋などを、記念に買って帰った

今度ゆっくり出来るときは、また来ようと思って
後ろ髪引かれる思いで出たけれど
諸事情あって、今は閉館されてしまい、残念でならない

そんな道造を描いた犀星の文は、
同じく文学の後輩にあたる堀辰雄、津村信夫と共に
年下の、まるで年の離れた弟か、甥などの身内のように
可愛くて仕方のない人物として描かれ、温かさに満ちている
それだけに、まだ志半ばで夭折したこの三人に対しての思いは深く
『伝記をかくときだけに彼らは現れ、私は話しこむのである』
という最後の記述が哀しい

百田宗治は、同じく高校時代の、そして今でも
最も好きな詩のひとつとして暖めている詩の作者だから
かなり期待して読んだのだけれど、悪いとは言わないが
私が勝手に描いていた人とは、イメージの違う人だったので
少しだけガッカリした

他、特に生涯の友であった萩原朔太郎と、
仲間である 千家元麿はとても魅力的に描かれていて
千家元麿などは、今まで全然馴染みがなかったけれど
紹介された詩の全部が、その人物像と共に
ぐいぐいと心の中に入り込んで来る

萩原朔太郎は、教科書で、月に吠えるを読んで
近寄ったら、尖がった透明のガラスの先で怪我しそうな
とても繊細で怖い人・・・のイメージしかなかったけれど
そうなのか・・そういう人だったんだとホッとしたし
全く性質の違うこの二人の詩人が、
まさか生涯の友となるとは思えないような
出会ったときの描写がとても興味深い

そして、面白いのは、『愛』だけではない『愛憎』が
特に、高村光太郎と、島崎藤村、一部 山村慕鳥への思いに
隠さず向けられているところがとても面白く
最後に、完璧な名解説をされている、伊藤信吉による
『十一人の伝記をとおして、実際には十二人の伝記が語られたのである。』
という言葉通り、まさしく他の詩人を描くことで
詩人であった室生犀星そのものの
ユニークな人物像が浮き彫りになっている

犀星の詩と言えば、小景異情
まさしく故郷を離れて33年になるけれど
今でこそ故郷のことを語れるものの
若き日は、故郷の思い出を封印し、
この詩を常に心に抱いて噛み締めながら
どれだけ自分自身の励みや支えにしてきたことだろう・・・

この中に、好きな詩人がいる方も、そうでない方も
実在した素晴らしい詩人たちの軌跡や、かつての日本を知る上で
一読の価値ある名著だと思う

それにしても思うのは、かつて文壇の詩人たちは
これほどまでに、お互いの間を行き来して、交流していたのですね
今の時代と違い、簡単には連絡が取れないし、情報もないだけに
余計足を運んで、交わることが多かったのかもしれませんね・・

才能ある人たちが、病にかかり、
いとも簡単に命を落としてしまったかつての日本
交流のあった人々と死に別れ、一人だけ生き長らえたことを哀しみながら
思い出して書く事で、再びその人たちに出会うことが出来たと言うモノ書きの性
そして、やはり、その室生犀星
恵まれない生まれ育ち、苦しい生活やコンプレックスを抱えながら
ペン一本でここまで文壇での地位を築いた軌跡がすごい!
やはり超ヘンジン森茉莉さんまでが認めるだけのことはあります

そしてまた元に戻って、立原道造なのですが
今改めてお写真を拝見すると
この頃よく見かける高校生、ネガティブモデルのR君によく似ていますね(笑


・・・本の表紙は山口蓬春
梅の木は、犀星によく似合う

DSCF1703.JPG

posted by マロニエのこみち・・・。 at 11:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 本・雑誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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